「BUSINESS SUPPORT」に弊社社長が紹介されました

BUSINESS SUPPORT 2007年7月号

女性企業家のアンテナ
第6回 渡辺美和子 渡辺教具製作所 代表取締役社長
地球紛争に環境問題… 世界の"今"を地球儀に込める

国内で独壇場ともいえる地球儀のシェアを握っている『渡辺教具製作所』。しかし、4代目にあたる渡辺美和子社長が1995年に就任した当時は、年商6000万円にすぎなかった。それが昨年は1億4000万円。中継ぎといいながらも、そこまで成長させた経営手腕に迫る。

──ご主人が逝去され、突然の社長就任でしたね。
渡辺 それまで会社のことにはまつたくタッチしていなかったですし、中継ぎのつもりでした。大改革をしようという気持ちもありませんでした。しかし、いざ会社に目を向けてみると、社員に給料を払うのも大変という状況。とにかく赤字経営から脱皮しなければと思ったんです。
──何からはじめられましたか。
渡辺 まずは営業活動でした。それまで大きな販売ルートはほぼ1本。理科教材を扱う問屋への売り上げが全体7、8割という状態だったので、直接取引できる新規ルートの開拓が急務だと考えたのです。文具店や百貨店などをまわり、先方のニーズを徹底的に聞き出しました。地球儀フェアの開催などの提案を始めたのもこの頃です。
──新しい取り組みに反発はなかったのでしょうか。
渡辺 もちろんありました。当時会社のスタッフは7人。そのうち3人が65歳以上。いいものを作っている、という自負心はあるものの、それを発信することや、新しいものを作り出すという空気はまったくありませんでした。
──改革に着手するにあたり、ご主人の経営方針を否定しているという気持ちはありませんでしたか。
渡辺 親戚を含めた家族運営なので、亡くなった主人は、改革したくとも、なかなか着手できないでいました。でも会社存続の危機に、しがらみを気にする余裕はありません。私としては、主人の遺志を継ぐのだという気持ちも後押しし、改革に臨みましたね。
──渡辺社長自ら製造現場に入っていかれたとか。
渡辺 新しいことをやろう!というのは簡単。新商品をどう作るかまで、きちんと指示できなければと思ったんです。現場に入っていくと問題点も明らかになってきました。製造工程は、手作業によるところも多く、職人が技術を抱え込み、共有化されていない状況でした。これでは作業効率も悪い。やり方を根掘り葉掘り聞き出し、自分も作ってみることにしました。
──成果はいつ頃から感じはじめましたか。
渡辺 約2年経った頃でしょうか。黒字に転換し、それまで売り上げ全体の3割に満たなかった直接の取引先、伊東屋さん、丸善さん、百貨店さんなどからの売り上げが全体の7、8割を占めるようになってきたのです。技術も全員で共有するようになり、新しい企画や、いままで取り組んだことのない地球儀の注文にも挑戦する機運が生まれてくるようになります。また、同じ時期に、球体を作る製造工程で、機械を導入。生産量が3倍に上がりました。
──テーマ性の高い地球儀の生産にも意欲的ですね。
渡辺 日韓ワールドカップの際には、気象衛星が撮影した地球の写真をサッカーボールにプリントした「エコシュート」や参加国を色分けしたサッカー情報の地球儀を作りました。また、地球の夜の姿を地球儀にした「夜の地球儀」や、国別の二酸化炭素の排出量、人口、原子力発電所の規模と場所を記した「緑の地球儀」、最近では、通信教育の『ユーキャン』から依頼を受け、世界遺産を記した地球儀の製作にも取り組んでいます。こちらは団塊の世代以上の方をターゲットにした商品で、旅行を楽しみ、その思い出を語り合うきっかけになることを想定しました。
──地球儀という枠に留まらないラインナップです。
渡辺 私たちは、たしかな技術はもちろんのこと、それ以上に、情報を売っているのだという自負をもっています。地球儀には、緯度や経度だけでなく、国境や国名などさまざまな世界の現状を伝える、多くの情報が詰まっています。しかも、それらは刻一刻と変化するものです。正確な情報が詰まっています。しかも、それらは刻一刻と変化するものです。正確な情報を、わかりやすい形で提供するということが、私たちの義務だと考えています。
──情報の収集はどのようにして行なっていますか。
渡辺 東海大学の技術センターのご協力で、人工衛星の情報を得ております。これによって、近年まで世界で第4に大きい湖だとされていたアラル海が、旧ソ連が引き起こした環境破壊によって、水面は15メートル以上も低下し、面積が約3分の1になっているという情報を、いち早く盛り込むことができました。「緑の地球儀」製作時には、いちばん正確な情報ということで、『防衛白書』を参照しましたね。
──情報の変化も、しっかり追いかけているのですね。
渡辺 変化するからこそ、製作した年代を地球儀に印刷しています。情報の見せ方、膨大な情報のどこに力点を置くのかについては、いまも試行錯誤中です。
──ますます膨らむ意欲の源はどこにあるのでしょうか。
渡辺 次世代にいい製品と、技術を残したいということ。そして、3人の息子たちに、いい形で会社を引き継げるようにという気持ちが大きいですね。私はもともと中継ぎ。自分がいなくなっても大丈夫なように環境を整えるのが仕事だと思っています。

渡辺社長のアンテナ!

●現場を知る

お客様のメリットと、作り手のロスを減らすことを同時に考えるのが責任者の仕事。だからどんどん製作現場に入り、お客様と接する機会を積極的に作り出す。

●新しい情報を正確に伝える

地球儀を作るだけでなく、情報を売っているのだ、という自負がある。世界、地球を取り巻く情報が常に変化するなか、いちばん新しい正確な情報をできるだけ早く商品に反映させることに、一生懸命でなければならない。。

●環境問題への思い

「緑の地球儀」には、環境破壊への強い警告のメッセージが込められている。次世代に向けて、自分たちにできることは、どんどん取り組んでいきたい。